2004年12月21日 今日のアルバイト 【古書業の格言】

年末になると、大型古書市の回数が増えてきます。
古書市は大きなデパート(京王、松屋伊勢丹など)や、古書会館、商店街などで開催されます。全国各地の古書店が大催しもの場などを利用して、大々的に商品を売り出すバザーのようなものです。*1

最近は、そんな事情を反映してか、古書市のための書籍の値付けや梱包の業務が多くなってきました。古書市は色んなお客さんが来られるので、それぞれの古書店は、開店以来強みとしている分野だけでなく、様々なジャンルの本を揃えます。
今日の業務では、画集の整理をしました。僕がアルバイトしている店は美術はそこそこですが、自分自身も美術に疎かったこともあって、画集をこんなに沢山見るのは初めてでした。画家にはそんなに詳しくないのですが、数ある画集の中でも、ハインリッヒ・フォーゲラー*2という方の画集に本能的に惹かれました。淋しげな美しさと繊細な線がミュシャっぽくあり、彩色の仕方がモネっぽくもあり・・・個人的に好きな画家と雰囲気が似ていたので、魅力を感じました。


空き時間に店主さんから古書業について色々とお話を聞きました。日本の古本屋*3勃興期の裏話・・・インターネットという新技術と古書業との連携が始まったとき・・・ビジネスとしての視点と古書店現場の意向、すれ違いと葛藤。僕はネットインフラが充分に整ってから古書を探し始めたビギナー世代なので、ネットを活用するまで書店にはそんな苦労もあったのか、と、勉強になりました。今ではネット検索無しの古書探しは殆ど考えられないけれど、実現に向けて何事かを成し、軌道にのせるまでには大変な苦労があるのだなあ、と痛感。また、古書店に配信されているニュース資料のコピーも幾つか頂きました。古書業の分類や性格、古書を売る時の注意点などが書かれていて、読んでいて新鮮。勉強になります。

以下、覚え書き


「相場は簡単に知ることができるが、相場だけでは商売にはならない。各人に見合う“芸”を知ること」
「本をドライに買い取るべからず。引き取る時は、お客様の思い入れ、本への愛情も一緒に引き取るべし」
「仲間内の売買では、一割引が仁義なり」
「自分で価値を見出す修行=書の錬金術
「常に複数の軸でマーケティングすべし。例:文学と宗教、歴史と女性など」
「古書は売るために集めるもの。よって、集めることに喜びを覚える人間は古書業に向かない」
「どんな古本屋になりたいか、というヴィジョンありき。何となくなりたいでは心許ない」
「古本屋の仕事はその人自身を映す。人のあり方そのもの」
「郷に入っては郷に従え。仕事の本質はそこにある」
「古本屋は在庫を作る仕事。飽きられたら終りだ」

*1:古書市に関する詳しいお話は、また回を改めてしたいと思います。お待ち下さい

*2:Heinrich Vogeler.ブレーメンの生まれ。1872-1942。http://www.ejrcf.or.jp/archives/exhibition/detail.asp?id=89%20&index=3

*3:http://www.kosho.or.jp/