僕が巡回しているサイトの一つに、ル・モンド・ディプロマティーク(Le Monde diplomatique )*1というところがあります。フランスの新聞社ル・モンド(Le Monde)*2の関連会社で(といっても、親会社とは関係を持っていないらしい。不思議だ・・・。参照:http://www.diplo.jp/precision.html)月刊誌を発行しているそうです。ル・モンド・ディプロマティーク日本版では、有志のスタッフが本国月刊誌の中から記事を選りすぐり、翻訳などを手がけ、配信しているようです。
今回は、その中から「それでも街の本屋は生き残る」という記事*3を紹介したいと思います。

都市型の大型新刊書店(都心で言えば、紀伊国屋三省堂ジュンク堂などなど)と、小さな街の本屋さん。新刊ベストセラーを売りたい、という目的で同じ土俵の勝負をすれば、どちらが魅力的でしょうか。僕に関していえば、大型書店が遠いなどのよっぽどな理由が無い限り、前者を選ぶと思います。いわゆる「街の本屋さん」に愛着を感じている反面、大型書店に追いつけ追い越せで、書籍の陳列やディスプレイを模倣しているだけのところに来店したりすると、勿体ないなあ、と思ってしまいます。
フランスでは(といっても2001年の記事ですが)そんな「街の本屋さん」が盛り上がっているようです。少し引用してみましょう。

成功の秘訣?経営をしっかりして、どんなときでも油断せず、つねに好奇心を研ぎ澄ましていること。それから、たえず情勢に適応するよう心がけ、しかも本来の持ち味は失わないこと。
人によってやり方はさまざまだが、めざすところは同じ。店の個性を打ち出すことだ。
「ほんとうの本屋は、生まれたての子どもの世話をするものです。そうすれば、他の店があとを引き継いでくれる」
品揃えで勝負して、店に置く本はすべて自分の目で選んでいます。いちばん面倒なジャンルに取り組んでいるんです。ここに来るお客さんは最新刊の売れ筋めあてじゃありませんから。客は店の雰囲気や、見識のある店主のアドバイスにも惹かれて来るものだ。
問題?いや、逆に楽しいですよ。新しい本を見つける楽しみとか、それを人に広める楽しみとかね。
大型書店、独立書店は、それぞれ違った役割を負っているのだ。本を世の中に送り出す者と、それを大きく広める者。
多くの場合、店の経営が健全で、店員に元気があれば、競争は街の本屋にとってプラスの刺激になる。
奪われた客も、やがては戻ってくる。彼らはベストセラーは大型店で買っても、エッセイや良質の小説は行きつけの小さな書店で買う。
「多くの書店が、在庫を抱えるなんて本屋の沽券にかかわると考えていて、インテリ然としたイメージを醸し出そうとしていました。それに第一、自分を商売人とは思ってませんでしたからね。ご存知の通り、昔の本屋はそれはもう気位が高かった。ジョルジュ・バタイユやアントナン・アルトーの全集を揃えているのを自慢する者も多かったし、もし推理小説やマンガなんか売る羽目にでもなったら落ちぶれたって思ったに違いないですよ」
業界の再編や系列化といった客観的要因を重視して、もっぱら経済の論理だけで考えてしまうと、往々にして忘れがちなことがある。一人ひとりの人間は、状況を全面的に変えることはできないにしても、抵抗戦略を編み出すことはできる。そして、一見すると自分たちに不利な制度の中で、ゲームのルールを逆手にとることもできるものだ。
人が本屋に来るのは、くつろぐためもあります・・・中略・・・それに、本を好きになってもらうようにするのが、我々の役割ではないでしょうか?
本を押しつけるというより、客の興味を呼び起こそうとするのです。
議論の場を設け、個人的なつながりをつくり、知識を役立て、親切にもてなすことで、書店は客にひいきにされるようになる。「お客さんが私たちを後押ししてくれるのです」
私は、商売人である以前に、お客様との交流が自分の仕事だと思っています。なんと言っても、人間関係はとても大切ですよ

大型書店が自分の欲しい新刊本を必ずといって良いほど高い期待水準で揃えてくれて、自分はそれを買うことを目的に来店するという、どちらかといえば機能的な関係なのに対して、街の小さな本屋さん、とりわけ、古書店の場合には、古くて手に入らないけれど価値のある本やまだ国内では注目されていないけれど店主さんが一押しにしている本・ある特定の層に評価の高い本を求めてやってくる傾向は確かにあると思います。その時、大型新刊書店の真似っこな品揃えをしている街の本屋さんと、いびつかもしれないけれど自分の選択意識をもって本を揃えている街の本屋さんとでは、どちらに愛着が湧くでしょうか。大型書店が個性を持つ、あるいは、持ち続けるというのは、なかなか難しいと思うのです。好き嫌いはハッキリ分かれていたし、僕もそれほど利用した経験は無いのですが、例えば青山ブックセンターなどは、大きめでありながら、ちゃんと個性と選択眼を持っていたと思います。事実、青山ブックセンターには根強い愛着を持ったお客さんがいます。これは結構スゴイことなんじゃないかなあ、と思うのです。
しかし、個性的な品揃えをすることは、しばしばメインストリームからも外れがちになってしまいます。それが店の運営ということと両立しないのも事実です。関連するところを引用してみると、
財務問題というのは決定的に重要だ。財務知識が欠けているか、あるいは知識を役に立てていないような書店があまりに多すぎる。

この折り合いをどうつけていけば良いのでしょうか。難しい問題だし、店を経営したことのない僕がこの問題に回答をつけていける自信もありません。ただ、「僕らの」街の本屋さんには、愛着を持っておきたい。大型新刊書店のミニチュア版みたいにはなってほしくない。売買という一方通行の関係だけの書店は面白くない。色のある書店/古書店に期待したいし、このBlogでも、そうした古書店さんを積極的に紹介していって、たとえわずかでもフォローしていければ良いなあ。