ねこねこ


27時間、家に帰れなかった。27時間労働の隙間に猫を見つけた。ぐーたらデブ猫と凛々しい黒猫。ぐーたらデブ猫は他者に触られるのが嫌いみたいで、撫でようとするとジワリとこっちを睨んでくるくせに、人懐っこさを示そうとでもするかのように自分からは身体を摺り寄せてくる。凛々しい黒猫は、片目が真っ赤に膿んで失明していた。人間が傷つけたのか、猫同士の喧嘩で傷ついたのか、自分でケガしたのか、僕にはわからない。ぐーたらデブ猫と違い、絶対に自分からは近寄って来ない。常に僕から一定以上の距離をとる黒猫。撫でようとすると、背を向けてサッと茂みの中へ飛び込み、逃げた。傷を負っても、なお凛々しい彼の背中に悲しみを覚える。一方で、ぐーたらデブ猫の無警戒な寝顔に絶対的な安らぎを覚える。喉を撫でてやると、ぐるぐる言って目を細め、気持ち良さそうに太った全身を揺する。凛々しさ。安らぎ。悲しみ。まだ俺の心は生きているんだなあ、と実感する。そして今、撮影された写真から実感を反芻する。それだけで幸福になれるほど。