oldbookstore2005-08-21


【前置き】
未だ振り返ればすぐそこにある、その気になれば手を伸ばして掴めそうな(でも、もう届かない)学生時代。わずかな食費を浮かすためにボリュームがあって値段がお手ごろな定食屋を幾つかまわった時期がありました。頻繁に定食屋を使っていた時期には、それほど思い入れも無く、当然のように訪れていたそれらのお店の前を今通り過ぎる時、どうしようもなく感傷的な気分になる自分に気付く。変に懐かしいのです。
そして、あの時分の思い出を反芻するように店に改めて入ってみる。定食を頼む。食べ終わる・・・。何だか違うんだなあ。あの時の感覚とは確かに違う。何が足りないのか、何が変わってしまったのか、よくわからないけれど。あの時の気分を追体験したいものだ等とそんなことを考えてながら定食グルメ関係の本を手にとってパラパラ読んでいると、図らずも刺激を受けている自分を発見。本の著書が定食屋に求めている要素(手作り感、値段、量など)が、学生時代に定食屋に要求していた自分の欲求と、ことごとくマッチしている。本が変わっても、著者が変わっても、その要求のテンションの度合いは殆ど変わっていないのも面白い。ということで、今、定食関係の本にハマッているのです。どれを読んでもハズレが無いから(今のところ、ですが・・・)
【本の紹介】
現在読んでいるのは、今柊二さんの『定食バンザイ!』です。(本の表紙は画像参照)神保町や早稲田といったボリューム満点かつ安く美味しい定食屋が密集する地域を中心に、著者が住んでいた横浜や出身の愛媛をはじめ、京都や大阪などの関西まで、結構幅広く、メジャーな定食屋を網羅しています。文章は語り調で柔らかく、「定食力」だとか、「ぶたぶたこぶた!・・・栄光の豚料理」など、著者のテンションがそのまま伝わってくるような造語を交えたストレートな書きぶりが心地よい。気取ってなくて良いなあ。普通に読んでも十分面白いのですが、実際にお店に行った経験があると、もっと面白い。「さぼうる」や「まんてん」のカレーとか、「キッチンカロリー」や「キッチン南海」など、「ああ!ここ行った行った」等と思いながら読むと尚のこと刺激的。冒頭に書いた学生時代の思い出を反芻できるような。そんな心地よさがあるのです。
この本とどちらを買おうか迷ったのが、野沢一馬さんの『大衆食堂』です。「もり川」(http://morishoku.hp.infoseek.co.jp/)など、愛する本郷の街の定食屋もそこそこ載っていたので、本当に迷った。買わなかったのは、本郷の街を見ていると、余りにも恋しくて悲しくなるから。いつかまた、帰りたい街。東京は苦手だけど本郷は好きだ。この本も今度買うことにしよう。
ちなみに、グルメ本ではないけれど、福田和也坪内祐三の対談集『暴論 これでいいのだ!』のpp.31からpp.37も、神保町のグルメに関する話題でイッパイ。これはこれで面白いかもしれない。